日々の重なり

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2012年衆議院選挙は「違憲状態」にあったが、「違憲」ではなく合憲・・ってどういうこと?(追記あり)

 こんにちは。

 

 前回の記事で触れた、「一票の格差」が最大2・43倍あった2012年衆議院選挙は、違憲・無効であるとして提起された訴訟について、11月20日に最高裁の判決が出ました。

 判決の結論は、以下の通りです。

・・・衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは,・・憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,上記各規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない(太字は筆者による)

 *裁判所ホームページ・裁判例情報より引用(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010action_id=first&hanreiSrchKbn=01

 

 つまり、2012年衆議院選挙は、違憲状態」(著しい不平等状態)にあったが、選挙までに是正措置がなされなかったとはいえないので、違憲」ではなく合憲である、と最高裁は判断したということです。「違憲状態」なのに合憲・・分かりづらいですね(笑)

 「違憲状態」と「違憲」、言葉遣いはほぼ同じですが、一体どのように違うのでしょうか?以下、補足説明をしていきます。

 

 

  投票価値の不均衡をめぐる訴訟について、裁判所が下す判決は、以下のような段階を踏みます。

                      NO

ⅰ  選挙区割りが、著しい不平等状態にあった→合憲判決

   ↓YES(違憲状態)      NO                                     

ⅱ 是正のための合理的期間を経過した→合憲判決(*)

   ↓YES

  違憲判決

 *合憲判決とはいえ、「違憲状態」にある以上、できるだけ速やかな対処が求められます。

 

 

ⅰ「著しい不平等状態」について

 最高裁は従来、衆議院であれば3倍以上の格差、参議院であれば6倍以上の格差があった場合について、選挙が「著しい不平等状態にあった」と判断してきました。

 ただ、11月20日に出た最新判例では、最大2・43倍の格差で「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」と判断しているので、上記の最高裁の傾向は、もはや過去のものといえるのかもしれません。あくまで、目安にすぎませんしね。

 

ⅱ是正のための「合理的期間」について

 選挙がⅰでみた「著しい不平等状態」、つまり「違憲状態」にあったとしても、裁判所は直ちに違憲判決を下すわけではありません。すなわち、是正のための「合理的期間」を経過して初めて、違憲と判断します。

 このような判断枠組みをとる理由として、最高裁は、「人口の異動は不断に生じ・・るのに対し、選挙区割と議員定数の配分を頻繁に変更することは、必ずしも実際的では・・ない」という理由を挙げています(最高裁昭和51年4月14日民集30巻3号223頁)。

 すなわち、人口の異動等によって著しい投票価値の不均衡が生じたとしても、国会が直ちに抜本的に対処することは困難です。そこで、是正のために必要となる「合理的期間」という概念を作り出し、その期間を経過したときに初めて、違憲と判断する、ということです。

 

 

*追記(2013年11月25日)

 2013年11月20日の判決において、2012年12月の衆議院選挙までになされた是正措置として、最高裁に評価されたのは、「一人別枠方式の廃止」のようです。

 「一人別枠方式」は、小選挙区選出議員の300議席のうち47議席について、各都道府県に一つずつ配分するという制度です(『憲法の創造力』57頁)。この制度は、平成23年に出された最高裁判決において、投票価値の不均衡を意図的に作り出すものとして、合理性を認め難いと批判されていました。

 最高裁の批判を受けて国会は、2012年12月の衆議院選挙までに「一人別枠方式」を廃止しています。その取り組みが、合理的期間内における是正措置として評価されたのだと思います。

 

 

 以上となります。

 それではまた。