日々の重なり

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趣旨・目的を意識することの重要性

 こんにちは。

 

 今回は、僕が法律学の勉強から学んだ、「趣旨・目的を意識すること」の重要性について、書いてみたいと思います。趣旨・目的を意識することは、法解釈以外の議論においても役に立つということを、官庁訪問を通じて実感したためです。

 

 以下では、①(法律学の思考パターン)、②(法解釈以外の議論でも、趣旨・目的を意識することは大事)に分けて、書いていきます。

 

 

①法律学の思考パターン

 法律の条文では、あらゆる状況において適用できるように、抽象的な文言が用いられることが多いです。そうした条文の抽象的な文言を、いかに解釈するかが問題となったとき、法律学では

 

 ⅰ 条文の趣旨・目的は何であるか、画定する

 ⅱ 画定した趣旨・目的に合致するように、条文の文言を解釈する

 

という思考パターンがとられます。「そもそも○○条の趣旨は~にある」という決まり文句から、議論が展開されていくわけです。

 以下、具体例として、慈善・教育事業に対する公金支出の合憲性を検討します(やや長いので、興味のある方だけ読んで頂ければと思います)。

 

 憲法89条後段は「公金‥は、‥公の支配に属しない慈善、教育‥の事業に対し、これを支出‥してはならない」と規定しています。

 つまり、慈善・教育事業に対する公金支出は、当該事業が「公の支配」に属していなければ、憲法89条後段に違反してしまうことになります。

 しかし「公の支配」という文言は抽象的すぎて、そのままでは現実の事案に適用できません。そこで、「公の支配」という文言をいかに解釈するか(=より具体的な基準に落とし込むか)が問題となります。

 上述したⅰ・ⅱの思考パターンに沿って、解釈の一例を挙げます。

 

  ⅰ そもそも憲法89条後段の趣旨・目的は、公費の濫用の防止にある(注:この点については、学説の対立があります)。

ⅱ そして、公費の濫用の防止という趣旨・目的を達成するためには、公費の濫用を防止できる程度に、国又は地方公共団体の監督が及んでいれば足りる。

 したがって「公の支配」に属するとは、公費の濫用を防止できる程度に、国又は地方公共団体の監督が及んでいることを意味すると解する(法解釈の結論=より具体的な基準の設定)。

 たとえば、当該事業による公金の使い道をチェックできるのであれば、公費の濫用は防止できるので、当該事業は「公の支配」に属するといえ、憲法89条後段に反しない。

 

 

②法解釈以外の議論でも、趣旨・目的を意識することは大事

 趣旨・目的を意識することは、法解釈以外の議論でも重要だと思います。

 以下、官庁訪問の一場面を想定します。

 

 ある学生が国家公務員の志望理由を問われて、「法制度作りに携わりたいから」という理由を挙げたとします(ロースクール出身者だと、この志望理由を書く人が比較的多いかと思います)。

 これに対する面接官の再質問としては、「国家公務員の仕事には、法制度作りだけではなく、法制度を実際に運用していくことも含まれる。そうした法制度の運用の業務にあてられたとき、君はどうするの?」というものが考えられます。

 これに対して、「いえ、もちろん法制度の運用にも関心があります。与えられた仕事については、全力で取り組んでいきたいと思います!」という回答をして、職務への熱意をアピールした場合、面接官は納得するでしょうか?

 

 僕は、この回答で納得してもらうのは難しいと思います。もちろん熱意のアピールは重要なのですが、この回答は「どんな仕事であっても、全力で取り組みたい」という結論だけで、説得的な理由付けが示されていないからです。結論としては正しい回答であっても、説得的な理由が付されていなければ、相手に納得して頂くことは難しいでしょう。

 では、どのような理由付けであれば、説得的でしょうか?

 僕のおすすめは、公務員の仕事は、何のためにあるのか、究極的には何を目的としているのかという、公務員の仕事の趣旨・目的にさかのぼって、理由付けすることです。以下、①で述べた法律学の思考パターンに沿って、回答の参考例を挙げます。

 

 「法制度作りだけでなく、法制度を運用する仕事にも、積極的に取り組んでいきたいと考えます(←まず結論を明示。以下、理由付け)。

 そもそも公務員の仕事は、国民の利益に資することを目的としています(思考パターンのⅰ部分に相当)。

 そして、法制度はただ作られるだけでは意味がなく、法制度が適切に運用されてこそ、国民の利益につながります(思考パターンのⅱ部分に相当)。

 このように、法制度作りとともに、法制度が適切に運用されることは、国民の利益のためにきわめて重要ですから、法制度の運用の仕事にも全力で取り組んでいきたいと考えます。」

 

 これだと少しあっさりし過ぎかな。。ただ口頭だと特に、できるだけコンパクトに伝えなければならないので、そことのバランスが難しいですね。 

 

 

 以上となります。長い文章を読んでいただいて、ありがとうございました。

 そろそろ趣味などについても、書いていけたらなーと思います。